予測不能時代の先導者になれ。GO三浦氏が語る広報PR・マーケッターに必要な視点【前編】

この記事で学べること
・PRパーソン、マーケッターが頭に入れておくべきこと
・PRパーソン、マーケッターに必要な視点
・本質的な企画、アイディアの出し方
・「人類史上最大の予測不能の時代」に何をすべきか

みなさんこんにちは!

今回は、3/7に行われた#戦略広報を目指す会のレポートをおとどけします。

登壇ゲストは株式会社GOの代表取締役、三浦崇宏氏。

三浦 崇宏(みうら たかひろ)氏は、博報堂・TBWA\HAKUHODOにて、マーケティング・PR・クリエイティブ領域の経験を経て、2017年に独立。
『表現を作るのではなく、現象を創ることが仕事』という信条のもと、企業の変革と挑戦を支援することをコンセプトとして、全く新しい思想・システムのPR/広告/マーケティング会社となる株式会社GOを設立しました。
クライアントの変化と挑戦を実行し、行きづまりの状態を打開、あるいは飛躍的に進歩や難解や障害の突破をうながすことをテーマにした「ブレイクスルーカンパニー」です。
人間の進化や多様性が社会をよくすると信じ、社会のあらゆる変化と挑戦をどう加速させるか、を日々考え、株式会社GOは進化と挑戦にコミットしています。

みなさんは、PRパーソンやマーケッターに必要な視点って何だと思いますか?

まったく新しい思想をもったブレイクスルーカンパニー株式会社GOの三浦氏が事例を交え、リアルなお話を語ってくださった本イベント。

日々の業務において、PR・マーケッター以外の方々も参考になることが多々あると思います。
ぜひ、自分だったらどうするかを考えながら読んでみてください。

PRパーソン・マーケッターが頭に入れておくべきこと

GO三浦氏が、まずPRパーソンやマーケッターに頭に入れておいてほしいということ。
それは「時代の機運は必ず振り子である」ということ。

三浦氏:たとえば「働き方改革」という機運が流れたら、今度は逆の「もっとみんな働こうぜ」という機運になる。そしてまたしばらくすると「働き方改革」がおこる。
これはもう完全に、時代の流れは振り子になっているということなんですね。

では、このことを頭に入れてもらったところで読者のみなさんに質問です。
ふつうの人が働き方改革に応じて、自由に働くためには何が必要でしょう?

日本でもっとも大きい不動産メーカー「三井不動産」をクライアントに、三浦さんが手がけた事例の一つ。

三浦氏:彼らクライアントは、リワークや働き方改革のためのシェアリストがたくさん出てきた際、「ふつうの人のための働き方改革をビジネスとしてやっていきたい」ということをぼくたちに伝えました。

なぜふつうの人かというと、例えば今回の「戦略広報を目指す会」のようなイベントに集まって、勉強している方(もちろんこのイベントレポートを読んでくださっている方も)は、三浦さんいわくとてもイノベーティブで、自分の主体性を持って働いているとのこと。
たしかにその通りだと思います。

ただ、世の中の85%くらいの人はそうじゃない。

三浦氏:スター○ックスで仕事をすれば周りの目が気になるし、セキュリティも危ない。リワークとかシェアオフィスで働くイメージもわかない。
基本的に、スタートアップやクリエイター、PRやマーケティングのために働いている人ってそんなに多くはないわけですね。

そこでさきほどの問、「ふつうの人が働き方改革に応じて、自由に働くためには何が必要か」を考えることがはじまります。
みなさん、答えは出ましたか?

イベント会場では、三浦さんが来場者の一人を指名しました。

その解答は…?

「上司の理解」。

三浦氏:素晴らしい!その通り。
本当にその通りで、正解は上司の理解。もっと言うと、「会社の許可」
問に対するこの答えが出て、どう進めていくかを考えたときに、ぼくらがつくったのがBtoBで従量課金型のシェアオフィスです。

これは日本に30か所ほどあり、例えばここにC CHANNELが登録すると、社員全員が日本の30か所どこでも使えるようになる、というもの。

しかも、スマートフォンでエントリーすれば入れるので、「今日はC CHANNELの三浦さんが朝入って、4時間後に出て行った」など、だれが何時間働いたか、ということをぜんぶ把握できるんです。

こういったテクノロジーによって、上司が理解をして、会社単位で契約できるシェアオフィスというビジネスモデルをつくったんだそうです。

このときは「ワークスタイル」を一人一人がつくれるようになるので、「ワークスタイリング」というネーミングにしたそうです。
このサービス名、Webニュースなどで見た方も多いのではないでしょうか。

この時代における「寄付」とは何か

「13歳で結婚、14歳で出産、恋はまだ知らない。」

こんなコピーが書かれた寄付団体の広告。駅や電車で見たことがあるかもしれません。
みなさんはこれを読んで、どう思いますか?

三浦氏:これは子供のときに教育も受けず、自我もちゃんと発達しきれないうちに、結婚せざるを得なくなってしまう女性がたくさんいますよ、これをいくらか支援して、世界を変えていきましょう、というメッセージがこめられた広告です。

たしかに読むとすごくキュンとするし、グッときます。
しかし、果たして今の時代にあっているだろうか?ということが、ぼくらが抱いた疑問です。

たとえば「アフリカ 飢餓」や「アフリカ 貧困」と検索すると、もう無限にいろいろな現象が出てきますよね。

「かわいそうな状況」というのは、もうこの世の中にはあふれかえってしまっていて、我々はすでに不幸を見慣れてしまっているのです。

たしかに言われてみればその通りかもしれません。かわいそうだな、とは思うけど、それによって何かアクションを起こすことは少なくなりました。
今は、クラウドファンディングなど、直接お金をブログで送ったり、人から人へ送ったりできる時代ですよね。
じゃあそんな時代に、「寄付とは何のためにあるんだ?」ということを、改めて捉え直さなければいけないことが、三浦さんたちの課題でした。

三浦氏:このときたどり着いたのが、社会において問題提起だけじゃなく、問題の解決を求める意識が必要なんじゃないか、ということ。

さらに、問題提起だけじゃなく、その問題の解決まで表現しないと炎上する可能性がある時代、ということも当時考えていました。

そのうえで、フィンテックやビットコインなど、「お金」というものに関心が高まっている時運でもあったこと、すべてひっくるめると、多岐にわたる課題のなかで、窮状を訴えるのではなく、不運さをサポートする寄付だとしたら。
「寄付は世界の女性への自立のエンパワーメント、つまり投資である」というところにたどり着きました。

そして「寄付から自立への投資」にひっくり返したコピーは、「女の子の未来に投資を」という企画になりました。

恵まれない子どもたち、なんて呼ばないでほしい。意思も、才能も、夢だってあるのだから。あなたの支援は、女の子を古い慣習から解き放つ。そして、昨日までなかった、人生の選択肢をつくる。女の子の未来に投資を、と。

つまり、「かわいそうでしょ」だけじゃなくて、世界中に大変なことがあるのは誰もが知っていて、でもそれよりも、「女の子の未来にちょっとお金を寄付することで、未来が、世界が良くなるよ」ということを表現してあげるのが、この広告の価値でした。

さらにこのとき、寄付のメニューまですべて変えたそうです。
さらには予算の使い方も全部変えて、ターゲットもちょっとお金を持っていそうな人に変えて、「Amazonでいくら以上頼んだ人にはビラが混入される」など、マーケティング、Webページの寄付メニューもつくり変えて、結果、寄付金が140%UPしたんだそうです。

PR・マーケティングに必要な視点は社会視点

今、PR・マーケティングに必要な視点、みなさんは何だと思いますか?

それは、一番大きな視点から物事を考えることだと、三浦さんは言います。
つまり、ブランド視点で物事を考える時代から、PR・マーケティングも企業視点、さらに言うと社会視点が必要になるということ。

三浦氏:ブランドの課題だけでいうと、今はコモディティ化してしまっていてあまり課題がない。
課題を無理やり探してしまっている。

だけど、実は本当に大事なことは、ブランドの課題解決で競い合うのではなく、社会の課題解決にとってそのブランドをどう役立てるか、という視点で考えること。

そうすると、そのブランドが本当にやらなきゃいけないことが見えてくる。
そういった視点で企画をしてみると、いろいろな事業、いろいろなサービス、いろいろなブランドの価値が改めて見直されて、プランが出てくる。

だから、「企画が出来ないんです」とか、「アイディアが浮かばないんです」という人は、「どういう課題があって、それに対してこのブランドって何が解決できるのか」という視点で考えると、企画がそんなにむずかしい物じゃなくなるかもしれません。

例えば、今コカ・コーラがペプシに追い上げられている、これを見てどう課題解決しますか?と聞かれたとします。
三浦さんの考えで言うと、

三浦氏:そんなもんはもうマジでどうでも良い。
市場は無限に広がっているし、いくらでも奪い合える。
そんな中で、ブランドの課題を解決するんじゃなくて、ブランドのどこに可能性があるか、どこに伸ばせるかを外部との接続視点で考えることが、PRもマーケティングもすごく重要。

社会の外のテクノロジー、あるいはトレンド、あるいはカルチャー。

自社の外側にある社会の動きと、自分のブランドを組み合わせたときに、なにが、どんな可能性をつくれるかってことを考えると、企画ってうまくいくんですよ。

課題を探ることに注力するのではなく、PR視点で世の中とブランドを結びつける。企業の広報もマーケッターにも、この視点が大切ということですね。

人類史上最大の予測不能時代に、何ができるかを考える

三浦氏:2019年以降は、人類史上最大の予測不能の時代と言われています。

2020年には、5Gが実用化されます。何が起きるかというと、すごくリアルなバーチャルリアリティの人間をサクっと転送できたりとか、4時間の映画を1秒で転送できたりする時代がくるわけです。

2020年以降の生活は超多様化で、超高齢化。2020年の65歳以上の人口は30%、副業の自由化2000万人。
日本の就労人口は約6000万人だから、6000万人のうち2000万人が副業とフリーランスをしている。

ということは、会社員を専業でやっている人は3分の1しかいなくなるということ。

今までのマーケティングは、いかにお客さんの時間を奪うか、いかに面積を奪い合うか、というルールだったのが、予測不能の時代においてはもうすべてが変わるわけです。

つまり、明日、世の中のルールが変わってもまったくおかしくない時代になってくる。

競合相手に対し「いかにうまくやるか」よりも、既存の競争力、新しいステークホルダーを提起する発想を持たないといけない、というわけですね。

技術の進化で変わる生活

三浦氏:夜寝る前、寝転がってスマホを見る人って多いと思います。
よくよく考えるとこの姿勢って、人類が今まで誰もとったことがない姿勢ですよね。

あるいは、歩くときに姿勢がちょっと前傾姿勢になっている。
日本人がこうやって前傾姿勢になったら、肩こりになったりする。
でも、肩こりという概念は、アメリカにはなく、日本人だけらしいんです。

逆に言うと、アメリカ人に肩こりを教えたら、肩こり産業、マッサージ産業がアメリカでものすごく流行るんじゃないかという話になる。

つまり、技術が進化すると生活が変わる。生活が変わると何かを売るチャンスが増えていく
新しい生活習慣を、どうやって新しい収益機会にするかっていうことが大事になってきますよね。

自動運転が進化したら、人間は自分で運転しなくなります。
そうしたら絶対に車のカタチが変わる。
ということはなにが起きるか?

ドライブシューズっていうものが売れなくなるわけですね。
ということは車の中で履くスリッパが売れるようになる。
あるいは、車の中で着るパジャマのようなものが売れるようになる。
ということは、部屋着を着ている時間がものすごく長くなる。じゃあ何が売れるんだっけ?

そんな感じで、生活習慣がテクノロジーによって変わるということは、何かを売る瞬間がまた増える。
そういうことにイチ早く気づけるかがマーケッターの仕事であり、PRパーソンの仕事でもあります。

PR・マーケティングは、時代の先導者になる

三浦氏:世の中では、すでにいろいろなことが起きていて、三井不動産は前に述べたワークスタイルで土地の管理、販売から不動産の活用会社に変わりました。

富士フィルムはフィルムメーカーから光学テクノロジーの会社に変わりました。

TOYOTAは車メーカーからモビリティサービスの会社に変わろうとしています。

既存の習慣も変わろうとします。

音楽産業も、ストリーミングサービスでサブスクリプションで音源にアクセスすることが重要になっていますよね。

ビジネスコミュニケーションは、電話とメールからチャットに変わってきています。
SlackやLINE、Facebookで連絡を取ることが増えていて、メールはすごくダサいものになる。

でも、10年前はこんなこと考えてなかったですよね。

決済手段は、スマホを介した電子円になる。

よく日頃から、スマホによる決済のシステムなんて日本では通用しないし、流行らないよ、と言われているけど、「100%流行る」と三浦さんは言います。

三浦氏:5年後、10年後に日本がどうなるか、なんとなくみんなイメージできていくなかで、いかに早く・誰よりも先に新しい可能性を見つけて自分のブランドができる、やるべきことにトライできるか
そういう事を求められている時代なのです。

三浦さんは、「PRやマーケティングの役割は、市場の支配者になることから、時代の先導者になることですよ」、という言い方をよくしているんだそうです。

視点を変えればアイディアが変わる

三浦氏:僕たちは、企画をするときにカタリストフォーチェンジって言い方をしています。
これは何かというと、株の言葉で、ある企業の株価がガラッと変わるきっかけをカタリストフォーチェンジ、「変化の触媒」と言います。

それは飛躍的な成長を導く、難関を打開するのに必要な、変化と挑戦の方向性を示す思考のフレーム。

広告会社で言うと、「このCMのコアアイディアは一体なんなのか」ということ。
そのコアアイディアというアイディアが、事業や企業活動ぜんぶに通用するんじゃないか、という仮説を持っていて、それをカタリストフォーチェンジと呼んでいます。

具体的にいうと、企業やブランドの本質からスタートして、社会の変化に応じて顧客への提供価値を再定義するアイディアのことです。

そこで最後の事例を用いてお話しします。

革命的な車いすが何で売れなかったのか、という話です。
その車いすとは、足漕ぎ車いす。人間の、「座ると勝手に足がのびていく」という反射行動を利用して、足が動かない人のリハビリに使えるというものです。

これがまあ売れなかった。

そこで、売れなかった理由は何だろうかと考えました。
この商品は当時「プロパント」っていう名前でした。そしてタグラインは「足漕ぎ式車いす」だったんです。

想像してみてください。

あなたが事故にあったとして、足が動かなくなり、不自由な状態になっている。
そこにお母さんが来て「すごい商品があるのよ、あなたも使ってみない?足漕ぎ式車いすよ」って言ったら「バカヤロウ」ってなるでしょう。

これがもう典型的な、メーカーから見た機能訴求の商品ネーミングで、全くユーザーサイドに立っていなかったわけです。

で、これを僕たちは、カタリストフォーチェンジで「足漕ぎ式車いす」ではなくて、「あきらめない人の車いす」っていう風に捉え直しましょう、と提案しました。

プロダクトのユーザーを「あきらめない人」だと捉えて、その人たちをヒーローにする。
あきらめない姿勢を持った人たちを巻き込んでいくということを定義し、ブランドをガラッと変えました。

商品名は「COGY」。コピーは、「あきらめない人の車いす」。

これをベースに、ぜんぶつくり直しました。

Webサイトの商品画像のすぐ後に、ユーザーインタビューを組み込んだり。

ここで面白かったのは、ユーザーインタビューの滞在時間が長かった人ほど購買に結びつくというデータがでたこと。
あきらめない人のマインドとか、エモーショナルグラフィックが実際に購買に繋がるということがWebでも検証できました。

さらに、PRでパラリンピックのアスリート、あきらめない人に実際に乗ってもらって、感想を言ってもらうシーディングもしたり。
おかげさまですごく上手くいきました。

こんな風に三浦さんたちは、カタリストフォーチェンジを株式会社GOとパートナーで共有して、プロジェクトを進めていきます。
その企業や事業、ブランドのあらゆる変化や行動の指針となる考え方に従わない行動やアイディアを、GOは実施してはいけないし、提案してはいけない。

さらには、パートナーが途中でカタリストフォーチェンジとズレたことを言ってきたら、「それはズレていますよね」、としっかり言ってあげる。

それが株式会社GOの基本的なスタンスだとしているそうです。

おわりに

PRとマーケティング、別々で考えられることもあると思いますが、実はこうやって考えるとたどる道は同じ。
予測不能の時代において、PRとマーケッターはどこを目指せば良いのか?

次回は、GO三浦さんへの質疑応答をレポートします。

表紙画像提供

河原塚 徹@書評好きマーケターさん、ありがとうございました!