ハイクラスエンジニア・デザイナーに特化した副業・複業採用プラットフォームOffers(オファーズ)を運営する株式会社overflow代表取締役・鈴木裕斗さんに、「プロダクトドリブン(プロダクトを起点にした企業)である自社の広報は、どのような目線や役割を持つべきか」をテーマに、START PR運営局がインタビューをしました。
現在overflowでは、副業として参画した広報担当者と共に、広報活動を遂行しています。
overflowの広報担当者は「コミュニケーションの翻訳に長けている」と代表の鈴木さんは言います。
overflowが広報に求めている目線や役割、広報担当者が参画してからの対外的なコミュニケーションの変化や、今後の広報戦略の展望までをお話しをしていただきました。
業態:HR SaaS事業
従業員人数:正社員10名(業務委託270名)
設立:2017年
広報を強化するときは「採用」か「事業の成長」の2択しかない
ーまず、広報を「副業」で採用しようと思った理由を教えてください。
鈴木さん:僕たちの会社は、プロダクトドリブンです。以前は広報活動もしていなかったので、ある意味、誰にも知られていない存在でした。
その中で広報担当者を採用しようと思った理由は、2点。
1点目は、プロダクトをつくり続けていく中で一定レベルに達し、世にお披露目してもいいかなという段階になってきて、認知を広げたいと思ったこと。
2点目が採用です。その時は幅広く採用活動を行ってました。基本的に僕は、広報を強化する時は、「採用」か「事業」の成長の2択に紐づく活動を進めたいと考えていたんです。
ーどのような人材を探していたのでしょう?
鈴木さん:僕たちが求めていた広報担当者は、「WEBでコミュニケーションができて、リレーションシップをつくれる方」でした。
広報人材は人によって得意分野が違うと思っていて。例えば、メディア(TV、雑誌など)に特化してる人、横軸でコミュニケーションに強い人、1対Nの拡散に強い人などがいます。今まで何人か優秀な方ともお会いできましたが、残念ながらマッチする人はいませんでした。
ーOffersの広報戦略としては、「メディアにどう取り上げられるか」よりも「顧客にどのように直接アプローチするか」の施策を進めていったほうがいいかもしれませんね。
鈴木さん:そうですね。最初は、目の前の1人をファンにし続けることを繰り返して、100人をファンにすることを目指します。
そうでないと、持続的なコミュニティやPRをつくることはできません。プロダクトを下支えするエネルギーの源が最初のコアなファンだと思っているので。
1対Nに対して瞬間的に認知を上げることはあまり効果がなく、一瞬で終わってしまうように思えます。
そうではなく、会社としてのoverflowやプロダクトとしてのOffersの魅力を訴求しながら、クライアントとなる企業・ユーザーとの強い結びつきを中長期的につくりたいと思っていました。
ーそうなると、WEBを活用してファンを増やす手法を知っている、WEBマーケター的な広報担当が合致しているのかもしれませんね。
鈴木さん:いわゆるメディアリレーションを主にする“広報畑”の方は、もしかしたら僕たちが考える広報の役割とは合致していなかったかもしれません。
「翻訳してくれて、裾野を拡げてくれている」経営者がリーチできない層を広報がリーチする
ー今回、START PRが副業としてoverflowの広報担当者を紹介いたしましたが、最初はどういった印象を持たれましたか?
鈴木さん:ご紹介いただいたPRパーソンの方が過去参画していたサービスにおいて、広報活動の実績が明らかでした。そのサービスのグロースの過程、発信の内容などから、その方のセンスが良いことは明らかに解りました。
ー広報担当者が以前していた広報活動も「どうやったら取材がくるか?」よりも「note活用SNS運用」などのファンづくりを重視していましたね。
鈴木さん:overflowの広報担当者が以前参画していた企業は、「新しい考え方の啓蒙」をしている企業だったと認識しています。啓蒙が入ってくると、広報活動の時間軸はおのずと中長期になるはずです。
Offersも「副業」という、1年前はまだ新しいテーマの考え方の啓蒙が必要でした。
そのため、中長期で丁寧なコミュニケーションをしている広報担当者を希望していました。
ー最初はどのように広報と連携して業務を遂行していましたか?
鈴木さん:開始は1年くらい前で、ディスカッションベースから始めました。広報担当者とoverflow、双方でインプットを進めて方向性と戦略を決めていきました。
最初はSNSの使い方、発信のプラットフォームをどこにするかなどを固めました。
その後は、自社で運営しているエンジニア、デザイナー向けのメディア「Offers Magazine」でトライアンドエラーを繰り返しながらいろいろな施策を試していきましたね。
ー「Offers Magazine」への広報担当者の関わり方は?
鈴木さん:Offers Magazineのアドバイザーとして参画してもらっています。
編集長は、社内にいて、しかもエンジニアに対する理解がある人間がなるべきだと考えているため、overflow共同代表の田中が担っています。
そのため、広報担当者は、編集長・田中やその他関係する部署ともSlackを活用し、コミュニケーションをとりながら進行しています。
週1での定期オンラインミーティングでは、連絡ツールとしてSlackで細かい部分の確認をし、文字ベースでは「notion」というドキュメントツールを使用しています。
ー広報担当者が参画してからお客さんとのコミュニケーションで褒められたり、返ってくる言葉に変化はありましたか?
鈴木さん:Offers Magazineで広報担当者が監修したものは、Twitter上での反応もコメントも、非常にポジティブなものが多かったです。
今まで、著名なエンジニアの内面をオープンにすることはあまりありませんでしたが、その記事を見て勉強になったと言ってくれる人もいました。
僕自身の記事も読みやすいと言ってもらえたり、定量的に言えば取材の数も増えて、記事のPVやフォロワーも伸びています。
定量化はしづらいですが、広報担当者が担当した記事は他の記事よりも明らかに多く見られているうえ、色々なサイトでの掲載や紹介も多く、通常記事よりもインパクトが大きいです。
ー広報担当者が加わったことで、「Offers Magazine」はどのように変化しましたか?
鈴木さん:以前は、自社の啓蒙コンテンツはほとんどなく、税金のことなどのノウハウ系コンテンツを掲載することが多かったですが、広報担当者と連携して、自社プロダクトであるOffersをブランディングする、面白いコンテンツをつくって発信していけるように方向性を転換しました。
広報担当者目線の「おもしろいコンテンツ」を定義してもらい、編集などにも入ってもらっています。
直近だと、プログラミング言語に特化したコンテンツ記事を公開したのですが、言語の掛け合わせのような、超ニッチな区切りで、ソーシャルで拡散されるものが世の中的にそれまでありませんでしたが、広報担当者が参画したことでデザインのトンマナが揃い、記事が拡散されはじめました。
コミュニケーションの翻訳にも長けているので、僕の求めるところを果たしてくれています。
今後は事業戦略や事業計画に沿い、定量的な広報活動を目指す
ー広報担当者が参画してから、会社全体へのメリットはありましたか?
鈴木さん:広報担当者には、自社のストーリーや伝わり方の「翻訳」をお願いしていて、営業、CS、採用、僕(代表)など、出来るだけいろんな部署と関わってもらっています。
自社のコミュニケーションについても、僕の1対Nのコミュニケーションに加えて、広報担当者がいることでより伝わりやすくなっていると思います。
ー会社全体としてコミュニケーションがどうあるべきか?どう対応するか?のような深い部分まで入ってもらっているんですね。
鈴木さん:自社以外と関わる全ての組織に対して、「どういう風に関わりどういう風に社会とコミュニケーションをとるのか?」の戦略をつくっている段階です。
広報担当者に意見や指針をもらいながら、それぞれの部署がどういうコミュニケーションをとるべきなのかの方向性をまとめています。
ー副業として参画する広報担当者と、共に仕事をすることの難しさはありますか?
鈴木さん:そもそもoverflowは、関わっているメンバーのほとんどが副業なので、抵抗はありませんでした。
強いて言えば、仕事にコミットできるときとできないときの波があることでしょうか。
それによってリソースを集めづらい欠点があるので、別のプランを経営側が持っておく必要があります。
ただ、これは副業によくあることなので、仕方ないことだと思っています。
ー今後、広報担当者と共に目指す、overflowの広報方針とは?
鈴木さん:今話しているのは、事業戦略、事業計画に沿った広報活動をしていくことです。
これまで、仮説検証が多くそれの因数分解を通じて、何が広報として良い戦略かは、ある程度見えてきました。
事業に紐づくKPIと広報がどのように連携するか、その精度を上げて、計画性を持ちながら、もう少し定量的な広報活動をしていきたいと考えています。
ライター:高橋 春香
Twitter:@haruka_asmg

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